マイナースケールのダイアトニックコード(四和音)のまとめ

2020-10-05

数回に渡ってメジャースケール、ナチュラルマイナースケール、ハーモニックマイナースケール、メロディックマイナースケールの四種類のダイアトニックコード(四和音)を取り上げてきました。

今回は3種類のマイナースケールのダイアトニックコードを組み合わせて、よりシンプルで実践的にコードを使えるようにしていきたいと思います。

【今回のポイント】
●3種類のマイナースケールを一つのスケールにまとめる
●まとめたマイナースケールから実用的なダイアトニックコードを抜き出す

マイナースケールを1つにする

メジャースケールのダイアトニックコードは覚えられても、3種類のマイナースケールのダイアトニックコードをそれぞれ覚えるのは大変ですよね。

しかも、覚えるだけじゃなくて実際にアレンジや作曲で使うとなると、さらにハードルが上がってしまいます。

長調ならメジャースケールと決まっているので分かりやすいのですが、短調は3種類のマナースケールのどれを使うか指定はされていません。

どれを使ったら良いの?なんて疑問に思われる人もいるでしょう。

なので、今回は3種類のマイナースケールをまとめて複合的なマイナースケールとして考え、そこからダイアトニックコードを効果的に選んで使えるようにしていきたいと思います。

まず、3つのマイナースケールを同格の3つのスケールとイメージしていると、どれを使ったら良いのか判断が難しくなります。

そこで、3種類のスケールを使用頻度で振り分けます。

すると、このようになります。

「使用頻度 高」 ナチュラルマイナースケール
「使用頻度 低」 ハーモニックマイナースケール
         メロディックマイナースケール

ジャンルによりますけど、概ねこんな感じです。

使用頻度の高いナチュラルマイナースケールを軸として、補足的に残り2つのマイナースケールを組み合わせる感じで考えてみます。

まず、それぞれのスケールの構成音をおさらいしてみましょう。

ナチュラルマイナースケール
1-2-b3-4-5-b6-b7

ハーモニックマイナースケール
1-2-b3-4-5-b6-7

メロディックマイナースケール
1-2-b3-4-5-6-7

見比べてみると、1から5の音までは共通しているのが分かります。

6と7の音がフラットかナチュラルかの違いが、それぞれのスケールを生み出しています。

ここで、大胆に3種類のスケールの構成音を全て組み込んで考えてみます。

すると、このようになります。

1-2-b3-4-5-b6-(6)-b7-(7)

ちょっと強引かもしれませんが、1から5は固定、6と7は状況によって選んで使う複合的なマイナースケールができました。

これで3種類の別々のスケールを使い分けるという難題が、6と7だけ選択肢があるという心構えに変わりました。

しかも、基本はb6とb7なので、6と7は「そういう時もある」というオプション的な扱いになってきます。

どうでしょう?これで随分と気が楽になりませんか?

マイナースケールはこうやって3種類のスケールをまとめて捉えておくと頭の中が整理しやすいです。

それぞれの音ごとに主に使うコードを選ぶ

3つのマイナースケールが1つにまとまったところで、次にダイアトニックコードも見ていきましょう。(構成音の違いは赤く表示している音になります)

【Im7/ImMaj7】
Iのコードはm7の場合が多いので、m7が基本となります。
予備知識的に、コードのb7が半音上がったmMaj7もあると覚えておけば良いでしょう。

【IIm7b5/IIm7】
IIのコードはm7b5の一択と考えておいて、ほぼ問題ありません。IIにm7が来るとメジャー感が出てきます。IIのコードはコード進行的に重要なコードなので、ここでマイナー感を強く打ち出しておく事で「この曲はマイナーなんだ」と印象付けることができます。

【bIIIMaj7/bIIIMaj7#5】
bIIIのコードもMaj7一択と考えておいて大丈夫です。何か不思議な響きがするなぁと感じた時にコードの5の音が#していないか確認するぐらいで良いでしょう。

【IVm7/IV7】
IVのコードは7〜8割ぐらいm7で決まりと言っても良さそうです。コードの聞き取りなどができるようになってくると、IVがm7の方がマイナー感があって曲に馴染んでいることが実感できるようになります。

IV7の場合は、マイナーというよりもブルースっぽい雰囲気になります。(メジャーブルースのIVはドミナント7th)

【Vm7/V7】
Vのコードはとても重要なコードです。Vm7でもV7でも、どちらでも使えます。使用頻度という点ではVm7の方が多いのかもしれませんが、重要度で言ったらV7に軍配が上がります。

ここで思い出していただきたいのが、マイナーの曲の中でV7を使うためにハーモニックマイナースケールという新しいマイナースケールを生み出すほど、V7が音楽的に重要なコードだったという点です。

マイナー(短調)でもメジャー(長調)でもV7からIのコードへの解決が一番強力な進行で、例えるなら水戸黄門の印籠、ウルトラマンのスペシウム光線、仮面ライダーならライダーキック…例えが古くてすみませんが、何にせよ肝心な決め所で繰り出す必殺技、待ってましたのキメ所となります。

この決め所がVm7−Im7という進行になると、「あれ?今日の水戸黄門って印籠出してなくね?」とか「今日のウルトラマンってパンチだけで怪獣倒してね?」ってなってしまって、ちょっともやもやした感じになってしまいます。

変身ヒーローものの番組が、今回は変身しなかったとしたらどうでしょう?

なんか普通の日常的な話だったね〜となるかもしれません。

逆に、その効果を狙って使うのがVm7と覚えておくと良いでしょう。

最後の必殺技的でドラマチックなV7、日常的でマイナー感を維持し続けるVm7という感じで、使い所の目的によって選べるようになっておくと作曲やアレンジの幅が広がります。

また、V7という技を効果的にキメるためのコンボとして、メジャーならIIm7-V7-I、マイナーならIIm7b5-V7-Imという連携があります。

最後のI/Im7はキャンセルして他の技に移行できるので、IIm7-V7とIIm7b5-V7をワンツーコンボとしておきましょう。

このワンツーコンボは俗に「ツー・ファイブ」と呼ばれる技で、ボクシングのワン・ツーの音楽版みたいなものです。

単発のファイブだけでも強力ですが、そこにツーが加わることで破壊力と精度、音楽で言えば進行感と存在感がグッと高まります。

さて、ここで先程のIIm7b5/IIm7の話を振り返ってみましょう。

ツー・ファイブはとても強力な技なので、慣れている人はツーが来た時にファイブを意識することがあります。そしてさらに先のワンや派生の技の選択肢まで意識する人もいます。

ツー・ファイブコンボの場合、ファイブのコードはドミナント7が定番なのでメジャーの進行もマイナーの進行もV7は共通です。

すると、必然的にツーのコードがメジャーの進行なのかマイナーの進行なのかを提示することになってきます。

マイナーの曲の中でIIm7-V7が出てきた場合、その部分だけメジャーに転調したと解釈することもできます。(そういう転調技もあります)

コード単体で見るとIIm7b5もIIm7もそれほど違いは無いように思えますが、このようにコンボを予期させるコードでもありますので、マイナー感をしっかりと維持しておきたい場合はIIm7b5を使うと良いでしょう。

この機会に、メジャーのツー・ファイブはIIm7、マイナーのツー・ファイブはIIm7b5と覚えておきましょう。

【bVIMaj7】
bVIのコードは、ほぼMaj7の一択です。応用編としてbVI6も使えます。

【VIm7b5】
VIのコードはm7b5で決まりです。
VIm7b5 – bVIMaj7 – V7(またはVm7)は綺麗なコード進行ですよね。実はこのコード進行の「VIm7b5 – bVIMaj7」の部分はコードのルートが半音下がっただけで、上声部は同じなんです。(上の図と見比べるとよく分かりますね。)

VIm7b5とbVIMaj7はとても響きが近いコードなので、ほぼ同じコードのルート違いと覚えておくと良いでしょう。

【bVII7】
bVIIはbVII7一択です。bVIIはナチュラルマイナースケールにしか含まれていないので、必然的にコードもナチュラルマイナースケールと同じものになります。

【VIIdim7/VIIm7b5】
VIIのコードは単体で考えるよりも、次のコードへの流れを聴き比べて選ぶと良いでしょう。dim7はルートを半音下げるとドミナント7thに、m7b5はルートを半音下げるとメジャー7thになるので、それぞれのコードを比較するとdim7はブルースっぽい複雑な響きに、m7b5はマイナーの中にもほのかに爽やかさが感じられる響きと言えそうです。

ちなみに、VIIdim7とbVII7もルート半音違いの関係です。

マイナースケールのダイアトニックコード(四和音)のまとめ

各コードの機能も含めて、マイナースケールで主に使うダイアトニックコードをまとめると、このようになります。

【主に使うコード】
Iマイナー7th     トニック
IIマイナー7th(b5)  (サブドミナントグループ)
bIIIメジャー7th   (トニックグループ)
IVマイナー7th     サブドミナント
Vドミナント7th     ドミナント
bVIメジャー7th    (サブドミナントグループ)
VIマイナー7th(b5)   (トニックグループ)
bVIIドミナント7th   (サブドミナントグループ)
VIIディミニッシュ7th  (ドミナントグループ)

【選択肢として持っておきたいコード】
IVドミナント7th    サブドミナント(場合によってトニックグループ)
Vマイナー7th     ドミナント
VIIマイナー7th(b5)  (ドミナントグループ)

【あまり使わないコード】
Iマイナーメジャー7th  トニック
IIマイナー7th     (サブドミナントグループ)
bIIIメジャー7th(#5)  (トニックグループ)

文字だけだとややこしいので、表にしてみます。

こうして見ると把握しやすいですね。
コードの機能はアレンジや作曲で重要な部分になってきますので、色分けしてみました。

上の表の内容がマイナースケールのダイアトニックコード(四和音)のポイントになります。

この内容を頭に入れておけば、マイナースケールのコードはかなり自由に使えるようになりますので、覚えておくととても便利です。

メジャースケール(長調)は各コードが決まっていましたが、マイナースケール(短調)はコードを入れ替え差し替えしながら使うスケールでした。

固まりきらないスケールとも言えますし、柔軟なスケールとも言えますね。

覚えるのは大変ですが、覚えてしまえば色々なバリエーションや変化を演出できるようになりますので、コード進行で多用な表現ができるようになります。

そのコード進行の面白さや楽しさを味わえるようになるためにも、メジャースケールとマイナースケールのダイアトニックコードの知識は欠かせないものになっています。

覚えるのは大変ですが、逆の言い方をすれば、その大変さを乗り越えた後ではコードの知識を持たない人と明らかな違いが出てくると言えます。

僕としては、メジャースケールとマイナースケールのダイアトニックコード(四和音)を知っているか知らないかは、作曲やアレンジの上での大きな分かれ目になると思っています。

ここさえ抑えてしまえば、コード進行は自由に作れるようになりますので、作曲やアレンジの能力を向上させたい方はぜひ頭に入れておいてくださいね。

次回からは、今まで養ってきたダイアトニックコードの知識を活かして、コード進行の世界に入っていこうと思います。

今までは小難しいお勉強的な内容が続いていましたが、ここから楽しくなってきますよ。

作曲やアレンジにすぐに使える内容になってきますので、楽しみにしていてください。

それでは、次のトピックでお会いしましょう。