メジャーのコード進行をマイナーに置き換える
前回のトピックではメジャー(長調)のコード進行を例に挙げて解説をしました。
今回はマイナー(短調)の基本的なコード進行のお話です。メジャーのコード進行をマイナーに置き換えると、また新しい世界が広がります。
【今回のポイント】
●メジャーとマイナーのコード進行の置き換え方
●短調ならではのコード進行
メジャーのコード進行をマイナーに置き換える
前回のトピックでは以下のメジャー(長調)のコード進行を取り上げました。
●I – I – V – V
●I – I – IV – IV
●I – I – IV – V
●I – VIm – IV – V
●IIIm – VIm – IV – V
●I – VIm – IIm – V
●IIIm – VIm – IIm – V
今回は、これらのコード進行をマイナー(短調)に置き換えて、メジャーのコード進行をマイナーに置き換えるポイントを解説したいと思います。
Im – Im – Vm – Vm
メジャーの I – I – V – Vの進行は、マイナーでは Im – Im – Vm – Vm になります。
VmをVとするとImへの解決感が強調されますが、バース(Aメロ)部分などで解決感よりも循環する感じを重視する際にはVmの方が馴染みます。
VmをVとした際にIm – Vmだとナチュラルマイナースケール一発で弾けたところがVのコードで違和感を感じる事があると思います。それはVmがVに変わる事で部分的にハーモニックマイナースケールになっている事が原因です。
Vのコードの部分はスケールを使い分ける必要がある事を覚えておきましょう。
動画のサンプル音源に合わせてスケールやフレーズを弾いてみると、その違いを実感できるのではないでしょうか。
Im – Im – IVm – IVm
メジャーの I – I – IV – IVは、マイナーでは Im – Im – IVm – IVm になります。
マイナー(短調)のサブドミナントの代表的なコードであるIVmはとても便利なコードで、留まっても良し、次のコードへ繋いでも良しという感じで、コード界の名脇役という存在です。
メジャーでもマイナーでもサブドミナントを上手に使えるようになると作曲やアレンジの幅が広がるので、ぜひ使い慣れていってください。
Im – Im – IVm – V(m)
メジャーの I – I – IV – Vは、マイナーでは Im – Im – IVm – V(あるいはVm) になります。
IVm – Vmの場合は並行進行によるコードが力強く上昇する感じを、IVm – Vの場合はVのところで浮遊感のようなものが生まれ、Imに解決する事で引き締まる感じがすると思います、
作曲やアレンジの際には、この違いを意識すると効果的にコードを使う事ができるようになります。
Im – bVI/VImb5 – IVm – V(m)
メジャーの I – VIm – IV – Vは、マイナーでは Im – bVI/VImb5 – IVm – V(m) になります。
ここまでのコード進行はそれぞれのコードをマイナーコードに置き換えるだけでしたが、ここから先はスケールを意識したコードの入れ替えになります。
Vのコードがナチュラルマイナースケールとハーモニック(またはメロディック)マイナースケールでVmとVの2択が生まれたように、VIのコードでもbVIあるいはVImb5の2択が生まれます。
bVIとVImb5の違いはルートが半音違うだけなので、上声部は共通です。
ベースラインをどうするかで使い分けると良いでしょう。
bVIとVImb5を意識して使い分けられるようになると、作曲やアレンジの表現力が上がります。
このようなコードの選択肢がマイナー(短調)の曲でのコード付けの面白さですね。
Im – bVI/VImb5 – IImb5 – V(m)
メジャーの I – VIm – IIm – Vは、マイナーでは Im – bVI/VImb5 – IImb5 – V(m) になります。
IImb5からのVはマイナーのツーファイブになります。ジャズ系の音楽では頻繁に出てくるのでIImb5-Vの進行はセットで覚えておくと良いでしょう。
IImb5からはVに繋ぐのが多く、個人的にはIImb5からVmの進行はIImb5で生まれたエネルギーが消えてしまう印象があるのですが、逆手にとってあえて使ってみるのも面白いかもしれません。
bIII – bVI/VImb5 – IImb5 – V(m)
メジャーの IIIm – VIm – IIm – Vは、マイナーでは bIII – bVI/VImb5 – IImb5 – V(m) になります。
メジャーで万能コード進行と言えるほど使い勝手の良い循環コードのIIIm – VIm – IIm – V。
しかし、マイナーではあまり実用性の高いコード進行ではありません。
メジャー(長調)のIIImはマイナー(短調)ではbIIIになるのですが、bIIIをコード進行の頭に持ってくるとマイナー感が薄れて聴こえます。
ですので、もし使うなら「Im – bVI/VImb5 – IImb5 – V(m)」から「bIII – bVI/VImb5 – IImb5 – V」というように後半のコード進行として使うなど工夫をしてみると良いでしょう。
bIII – bVI/VImb5 – IVm – V(m)
メジャーの IIIm – VIm – IV – Vは、マイナーでは bIII – bVI/VImb5 – IVm – V(m) になります。
こちらも上記のコード進行と同じようにbIIIの使い所を工夫すると良いでしょう。
マイナーならではのコード進行
メジャー(長調)ではI-VIImb5という進行はあまり使用頻度の高くないコード進行ですが、マイナー(短調)ではIm-bVIIが効果的に使えます。
下降するベースラインが、よりいっそうマイナーの哀愁感を感じさせます。
Im – bVII – IVm – V(m)
Im – bVII に定番の IVm – V(m) を加えた循環コードです。
マイナーらしいドラマチックな感じがしますね。
Im – bVII – IImb5 – V(m)
上記のコード進行のサブドミナントを入れ替えたものです。
マイナーの1−6−2−5進行の6を7に入れ替えたとも言えますね。
Im – bVII – bVI/VImb5 – V(m)
こちらはサブドミナントをIImb5ではなくbVIに入れ替えたコード進行です。
ベースラインの下降が続き、ドラマチックな感じがより強調されました。
Im – VImb5 – bVI – V(m)
VImb5からbVIのベースの半音下降を組み込むと、こういうコード進行も作れます。
連続するベースラインの半音下降が独特な雰囲気を演出しますね。
マイナー(短調)の曲では下降する進行がとても合います。
bVI/VImb5とbVIIを効果的に使うと、単にメジャーのコード進行をマイナーに置き換えたものとは違うコード進行が生まれますので、ぜひ使い慣れてみてください。
メイナーのコード進行の例、いかがでしたでしょうか?
参考例が多くて全部を覚えるのは大変ですね。
しかし、基本的な構造はメジャーのコード進行をマイナーのダイアトニックコードに入れ替えたものですので、メジャーのコード進行を覚えておけば比較的楽にマイナーのコード進行も使えるようになっていきます。
マイナーのコード進行はメジャーに比べると力強さは薄れるかもしれませんが、コードの入れ替えのバリエーションが多く精細で多彩な表現ができますので、ドラマチックなコード進行が好みの方は色々と試してみると楽しいですよ。
次回は、メジャーとマイナーを繋ぐ美味しいコードの使い方を取り上げてみたいと思います。
J-Popではこのコードの使い方がヒットソングの要の一つにもなっているので、楽しみにしていてください。
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