なめらかに転調するコツ ~ピボットコード~
今回は転調の際の要となるピボットコードを取り上げたいと思います。
前回の記事では同じ音を起点とする長調と短調(同主調の関係)での転調についてお話ししました。
メジャーにマイナーをさりげなく組み込むサブドミナントマイナーは部分転調だけでなく、まるごと転調する時にも使い勝手が良く、その便利さは作曲やアレンジの際に際立ちます。
今回は同主調以外にも転調する際の足がかりとなるコードの使い方のお話です。
【今回のポイント】
●転調にはいくつかの方法がある
●滑らかに転調させるにはダイアトニックコードに着目
●ピボットコードを使った転調方法
転調を動画に例えると
転調をする際に、転調部分をメロディーやコードの流れを妨げることなく繋げることは大切なポイントです。
転調部分でガラッと転調する曲もありますが、それを意図的に行っているのか、それともそれしかできないからその方法をとっているのかでは話が変わってきます。
色々な転調方法を自由に選んで使えるようになると曲作りの幅もグッと広がりますので、今回の内容もご自身の音楽制作に役立ててもらえたらと思います。
Youtubeやニコニコ動画などで動画の編集をされる方にはイメージしやすいと思うのですが、転調は異なるキーでできた曲のパーツを繋ぐこととも言えます。
動画の編集に例えると、AというムービーとBというムービーをストーリーや見せ方を考えながら繋いでいくような感じです。
この変わり目の部分にトランジションのエフェクトをかけることが多いと思いますが、どんなエフェクトを使うか、トランジションにどれぐらいの時間をかけるかというのも動画クリエイターの感性やセンスの見せ所のひとつです。
音楽でいう転調は、このトランジションやカット割と似たようなものです。
どんな方法で転調するか、どれぐらいの長さあるいはコード数で転調するか、ひとつの転調をとってもそこに作曲者やアレンジャーのボキャブラリーや感性が反映されています。
転調の方法を知っていくことは作曲やアレンジの技量を確実に伸ばしてくれますし、曲作りの上での制限を軽くして、より自由に音を紡いでいけるようになります。
今まで覚えたコードの使い道をさらに広げるためにも、転調のボキャブラリーも身につけていきましょう。
さてさて、上の図ではAとBをなめらかに繋ぐためにトランジションエフェクトを両方にまたがるようにかけていました。
音楽で表現すると前のパートから後ろのパートへと調が変わっていく際に、異なる調同士をつなぎ合わせるコードの使い方がトランジションと言えます。
AのムービーにもBのムービーにもエフェクトがかかり、その間はAとBの両方が再生されていて徐々にAからBへと移り変わっていきます。
ここでポイントとなるのは、トランジション中はどちらのムービーも共存しているということです。
これを音楽で表現するとAパートとBパートで共通するコードを使用して、異なる調をなめらかに繋ぐという手法になります。
ピボットコードで滑らかに転調
それでは実際にサンプルを聞いて確認してみましょう。
こちらのサンプルを聞いてみてください。
Cメジャーのキーで始まってDm7をきっかけにしてキーがFメジャーに変わり、またDm7でCメジャーに戻ります。
このきっかけとなるコードが動画の例で言うところのトランジションの部分になります。
転調前のCメジャー(長調)、転調後のFメジャー(長調)のどちらのダイアトニックコードにも含まれるコードをトランジションとして使用し、その部分で調を入れ替えます。(Dm7はCメジャーではIIm7、FメジャーではVIm7)
このように転調する際の2つの調に共通したコードをピボットコードと呼びます。
バスケットボールをしたことがある方でしたら、ピボットという言葉は馴染みがある言葉だと思います。
ピボットとは、片足を軸にして軸足を動かさない限りは自由に動けるという技術/ルールですよね。
転調におけるピボットがまさにピボットコードです。
他にもサンプルを聞いてみましょう。
こちらはマイナーのキーへの転調例です。
Am7をピボットコードにしてEマイナーに転調して、またAm7でCメジャーに戻ります。
上記の2つの例では転調前のキーに戻りましたが、以前のキーに戻る必要は全くないですし、さらに他のキーへと転調するのもアリです。
この例では、Eマイナー(短調)とGメジャー(長調)は同じ構成音のスケールで成り立っていて(正確にはEナチュラルマイナーとGメジャースケール)、ダイアトニックコードは大部分が共通しています(ハーモニックマイナースケールとメロディックマイナースケールならではのコードは除く)。
このような関係の調を平行調(relative key/リレイティブ・キー)と呼びます。メジャースケールの6番目の音から始まるナチュラルマイナースケール、ナチュラルマイナースケールの3番目の音から始まるメジャースケールが平行調の関係になります。
平行調同士はほとんどのコードをピボットコードとして使えますので、自然に転調できる間柄と言えるでしょう。
と言いますか、ピボットコードを意識する必要も特になく行ったり来たりできるのですが、短調の5番目のコードをドミナント7にして1番目のマイナーコードに解決させると転調感を強調できます。
これらの例のように異なる調の中から共通するコードを見つけて、そのコードをピボットコードとして転調することで音楽的に滑らかに調を入れ替えることができます。
ピボットコードの使い方のポイント
ピボットコードの部分でコードの流れがギクシャクして聞こえる場合は、コードを転回させて構成音同士をスムーズに繋げることを意識してみましょう。
また、コードだけで考えるのではなく、そこにメロディーがどのように乗るかもポイントになってきます。
メロディーがスムーズに流れていれば、コードの繋がりが少しぎこちなくても違和感をそれほど感じないこともあります。
大切なのは、全ての音を鳴らした時に実際に聞いてみてどう聞こえるかということですから、あまり理論にこだわる必要もありません。
転調したいけどどのキーやコードを使えば良いのか分からない時に、当てずっぽうで一つずつコードを試していくよりは、ピボットコードという考え方を使うと早く見当がつけられるようになりますので、そのような便利なツールとして役立ててもらえたらと思います。
前回取り上げたモーダルインターチェンジは同主調のキー同士、今回お話ししたピボットコードは2つのキーで共通するコードが存在する場合に使用できるテクニックでした。
では、共通するコードが無い場合や共通していても音楽的に使いにくいコードだった場合はどうしたら良いのでしょう?
もっと自由なキーに転調したいときはどうしたら良いのでしょう?
そんな時に使えるテクニックを次のトピックでは取り上げたいと思います。
そのテクニックにも今回お話ししたピボットコードの考え方が関わってきますので、ピボットコードという考え方に慣れておいてくださいね。
それでは、また次回のトピックでお会いしましょう♪
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