ディミニッシュセブンスは忍者コード
ドミナントセブンスコードで裏の世界に突入するお話を前回のトピックで取り上げましたが、今回はまた違う面からドミナントセブンスコードに切り込んで、コード進行の可能性を広げてみたいと思います。
今回はちょっと癖の強いコードのお話になります。
ダイアトニックコード以外のコードを曲中に盛り込む時にも便利なので、大人びたコード進行に興味のある方に役立てていただけたらと思います。
【今回のポイント】
●ドミナントセブンスと響きが近いディミニッシュ
●ドミナントセブンスの代理としてのディミニッシュセブンス
●パッシングディミニッシュ
ドミナントセブンスとディミニッシュセブンスの関係
ドミナントセブンスコードの裏コードのお話を以前に取り上げましたが、ドミナントセブンスコードのM3とb7の音がトライトーンという重要な響きになっていて、その音を反転させた音をM3とb7に持つコードが裏のドミナントセブンスコードと呼ばれる関係になっていました。
例えばG7を例に挙げると、このようになります。
[G7]
F b7
D P5
B M3
G ルート
*音符と指板のポジションは一致していません。
G7の裏コードになるbD7はこのようになっています。
[Db7]
Cb(B) b7
Ab P5
F M3
Db ルート
BとFが共通音で、G7ではBがM3でFがb7、Db7ではFがM3でBがb7になっていることが確認できます。
この2つの音を持っているコードがドミナントセブンスコードの裏のドミナントとして使えるコードの条件となっています。
しかし、実は裏のドミナント以外にもドミナントセブンスの代わりに使えるコードがあるんです。
それはドミナントセブンスコードではないのですが、構成音がほぼほぼ同じで、ジャズの歴史の中ではこのコードが流行になって、ツーファイブをこのコードに置き換えることがクールとされている時代もあったほどのコードです。
その頃に研究し尽くされるほど研究されて、今ではちょっと古臭い使い方と言われてしまうようですが、ちょっとしたポイントで使うとジャズっぽい雰囲気が演出できたりするので、アレンジの歴史のエッセンスを取り入れるという意味でも身につけておくと良い知識だと思います。
そのコードとは…………………
ダカダカダカダカダカダカ(スネアロール)…………ダンッ!!
ディミニッシュセブンスコードです!
そうなんです、実は今まで変わり者と言われていた変則的なコードのディミニッシュセブンスコードが今回の主役なんです。
ディミニッシュコードって言ったら、ちょっと使いどころの分からないコードで、短3度の平行移動でギャーン、ギャーン、ギャーン、ギャーン(語彙力不足ですみません)ってフレーズ以外にあまり使いどころがないなぁと思っていた人も、今日からディミニッシュセブンスコードがおしゃれなコードに生まれ変わります(多分)。
ディミニッシュセブンスコードの構成はこのようになります。
R – b3 – b5 – bb7(M6)
あれれ?ドミナントセブンスコードとは全然違う構成になっていますね。
これで代理コードとして使えるってどういうことなんでしょう?
では、構成音で考えてみましょう。
G7の構成音はこのようになります。
G – B – D – F
Gディミニッシュセブンスはこのようになってます。
G – Bb – Db – Fb(E)
ルートのG以外は全部違いますね。
本当に代理コードになるのでしょうか?
実は、ここにディミニッシュセブンスコードの秘密がありまして、半音あげるとあら不思議!
G7の半音上のG#ディミニッシュセブンスコードの構成音はこのようになります。
G# – B – D – F
なんと! ルート以外の音がG7と同じ音になっていました!
G# – B – D – F (G#dim7)
G – B – D – F (G7)
むしろ、裏のドミナントセブンスのDb7よりも共通音が多いという隠れドミナントセブンス的なコードだったということが判明しました!
G7とG#ディミニッシュセブンス、名前からは全然違うコードという感じがしますが、実はこんなに近いコードだったんですね。
ドミナントセブンスコードのルート以外の音を半音下げたコードがディミニッシュセブンスコードになるのですが、逆の見方をすると、ドミナントセブンスコードのルートを半音上げたのがディミニッシュセブンスコードとも言えます。
ダイアトニックコードの中でもVIIdim7はドミナントグループに属していましたが、このようにコードの響きがとても近かったからなんですね。
ディミニッシュをどうやって使おうか?
さて、そんなこんなでディミニッシュセブンスコードが意外とドミナントセブンスコードに近いということが分かりましたが、実際のところどうやって使ったら良いのか気になりますよね。
では、実際に音を出して確かめていきましょう。
Dm7 – G7 – CMaj7 – Am7 というコード進行があったとします。
単純にG7をG#dim7に入れ替えるだけでOKです。
ドミナントセブンスコードの半音上のディミニッシュセブンスコードというのがポイントです。
別の考え方としては、G7b9というテンションコードのb9であるAbをルートにしてGを省略したコードという解釈もあります。
なので、ディミニッシュコードを代理として使っているというよりも、ドミナントセブンスコードのルートを半音上げたものという感覚の方が使いやすいかもしれません。
Em7 – A7 – Dm7 – G7 というコード進行を
裏コードにすると
Em7 – Eb7 – Dm7 – Db7 というコード進行になります。
裏のドミナントをディミニッシュセブンスコードに入れ替えると
Em7 – Edim7 – Dm7 – Ddim7 というコード進行になります。
コードは下降させたいけどベースは留まらせたいという場合に使えそうですね。
また、こんな風に1小節の中でツーファイブになっている場合もディミニッシュセブンスコードに置き換えることができます。
↓ ↓ ↓
考え方としては、G7を1小節の中でツーファイブ化したものを元の1つのコード(G7)に戻してから、そのコードをディミニッシュセブンスコードに置き換えたというものです。
また、ディミニッシュセブンスコードは全ての音がm3で重なり合っているので、短3度で平行移動してコードを転回する使い方もできます。
Ddim7 = Fdim7 = G#dim7 = Bdim7 (構成音:D F Ab B)
↓ ↓ ↓
ディミニッシュセブンスコードは転回しても同じ構成音ということを活かして、このような使い方もできます。
ディミニッシュセブンスコードを挟むことで、また色々な選択肢が生まれてきますね。
ちなみに、ディミニッシュセブンスコードは3つのグループに分けられます。
Cdim7 = Ebdim7 = Gbdim7 = Adim7 (構成音:C Eb Gb A)
C#dim7 = Edim7 = Gdim7 = Bbdim7 (構成音:C# E G Bb)
Ddim7 = Fdim7 = Abdim7 = Bdim7 (構成音:D F Ab B)
*G#dim7 = Abdim7
コードの名前は変わりますが構成音は同じなので、転回形と解釈して使うこともできます。
「うわ~、ディミニッシュから別のディミニッシュに行くのか~」なんて思ったら、ただの転回形で同じコードだったということもありますので、そういうところも分かってくると一見複雑なコード進行の中にシンプルな道が見えてくるかもしれません。
コードを繋ぐディミニッシュ
ドミナントセブンスコードからは脱線してしまいますが、ディミニッシュセブンスコードは連続するダイアトニックコードの間に挟むクッション的な使い方もできます。
なんのこっちゃ?と思われるかもしれませんが、実際に音を出してみると分かりやすいのでギターを手にして確認してみてください。
| CMaj7 | Dm7 | Em7 | FMaj7 |
というコード進行があったとします。
こんな感じでディミニッシュセブンスコードを挟むことができます。
↓ ↓ ↓
このようにコードとコードの繋ぎ役として使うディミニッシュセブンスコードはパッシングディミニッシュと呼ばれています。
3-6-2-5のような下降するコード進行の時にはこのようなコード進行も考えられます。
↓ ↓ ↓ 裏ドミナントに置き換え
↓ ↓ ↓ 裏ドミナントをディミニッシュに置き換え
↓ ↓ ↓ パッシングディミニッシュに置き換え
下降する場合はドミナントの代理のディミニッシュにするか、パッシングディミニッシュにするかで選択肢が生まれますね。
どちらにしようか判断がつきにくい時は、聞いてみてしっくりくるコード進行を選ぶと良いです。
ディミニッシュセブンスはドミナント的な使い方もできますし、コードの繋ぎ役としても使る便利なコードですね。
忍者のようなディミニッシュセブンスコード
それでは、今回のトピックのおさらいをしましょう。
●ドミナントセブンスのルート以外の音を半音下げるとディミニッシュセブンスになる
●ドミナントセブンスのルートを半音上げるとディミニッシュセブンスになる
●ドミナントセブンスは半音上のディミニッシュセブンスに置き換えられる
●裏のドミナントセブンスも半音上のディミニッシュセブンスに置き換えられる
●ディミニッシュセブンスは転回させると違う名前のディミニッシュセブンスになる
●パッシングディミニッシュでコードの流れを滑らかにすることもできる
一人何役もこなせる便利なコードですね。
影のあるダークな響きで、スポットライトを浴びるような華やかなコードではありませんが、人目につかないところで暗躍する忍者のようなコードと言えそうです。
ジャズの時代の中では一時期ディミニッシュコードがクールとされて、ツーファイブでディミニッシュが多用される時代があったそうです。
その後研究し尽くされて、ディミニッシュを使うと「ダサっ」「古くさっ」なんて言われた頃もあったそうですし、ロックやポップスでディミニッシュの平行移動フレーズを使うと定石すぎて面白みにかけることもあるかもしれませんが、時代の流れとともに流行り廃りは変わりますし、若い世代には逆に斬新に聞こえるものもあるかと思います。
使う使わないは置いておいて、このような技法があるということを学び、それを使えるようになっておくのは価値のある事です。
知らなければ使いこなせない、知れば使うことができるし、自分に選択肢が増える。
そうやってご自身の可能性の幅を少しずつ広げていってもらえればと思います。
さて、コード進行についてしばらく取り上げてきましたので、コード進行の知識は増えたと思いますが、じゃぁこのコード進行の中でどんな音が使えるのかってところも気になってきますよね。
曲のキーの中で確実に使えるコードがダイアトニックコードでしたが、そのスケール版とも言えるダイアトニックスケールというものもあります。
次回からスケールのお話に戻って、ダイアトニックスケールのお話をしていきたいと思います。
先日、ボサノバ風のBGMを作ってYoutubeにアップしたんですけど、今までお話ししてきたコードの知識とダイアトニックスケールの知識を組み合わせると、コード進行の中でメロディーや伴奏の音を選んで使えるようになれます。
僕はピアノは弾けませんが、大まかな伴奏を作った上で、コードに合わせて音を調節してなるべく自然に聞こえるように作っています。
スケールやコードの知識はギター演奏以外でもこのようにDTMでも使えますから、ぜひご自身の演奏や創作活動に使ってみてください。
それでは、次のトピックでお会いしましょう♪
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