メジャーコードでスケールの2択 〜アイオニアンとリディアン〜
ダイアトニックコードとダイアトニックスケールは密接な関係にありまして、ジャズ系のアドリブを目指すプレイヤーだけでなく、作曲やアレンジに磨きをかけたいという方にもとても役に立つ知識です。
例えば、メロディーとコードがなんかしっくりこないとか、ちょっとメロディーが調子外れな気がすると感じた時に、その原因が分かって自然な音の流れに調節することができるようになります。
今回はメジャー系のスケールとなる、アイオニアンスケールとリディアンスケールを取り上げて、どう使い分けるのか見ていきたいと思います。
【今回のポイント】
●メロディーがなんとなく外れて聞こえる原因
●メジャーコードでのスケール選択
●部分転調への対処方法
●意外と多いリディアンの使いどころ
自然なメロディーはスケールの選び方が鍵
アイオニアンスケール(1-2-3-4-5-6-7)とリディアンスケール(1-2-3-#4-5-6-7)の違いは4番目の音がナチュラルかシャープしているかという点です。
その半音の違いでスケールを使い分けるのって面倒くさいなぁ〜、なんて思いません?
それぐらいの違いなら「メジャースケールと同じ音使いのアイオニアンスケールだけで良いや」って思う方もいるかもしれません。
4番目の音を使わないフレーズやメロディでしたら違いはありませんので、それで問題ありません。
しかし、自分で作った曲でほんの少し違和感を感じるメロディーラインになっていたりすることってありませんか?
例えばFMaj7 – CMaj7 – FMaj7 – CMaj7というコード進行で、シンプルなフレーズを繰り返すこんなメロディーがあったとします。
それぞれのコードで同じフレーズを繰り返していますね。
次にこちらのサンプルを聴いてみてください。
2小節目のCMaj7と3小節目のFMaj7のフレーズがちょっと「あれ?」ってなりませんか?
こんな感じで、ほとんどオッケーなんだけど今ひとつしっくりこない感じって経験ありません?
ギターで弾くとそんなに気にならないのに歌ってみると音を取るのが難しいメロディーになっていたり、他の楽器が重なってくると浮いて聞こえたり、濁って聞こえたりすることもあります。
そんな時は、アイオニアンスケールとリディアンスケールのたった一つの半音の違いのような些細な違いが影響している場合があります。
最初のサンプル音源では Fリディアン – Cアイオニアン – Fリディアン – Cアイオニアンの音使いでした。
2番目のサンプル音源では Fリディアン – Cリディアン – Fアイオニアン – Cアイオニアンの音使いになっていました。
表現したいフレーズとなんとなく違うと感じても、どう違うのかってなかなか分からないですよね。
その違いに、どうやったら気づけるようになるのか?
鍵はダイアトニックスケールにあります。
ダイアトニックコードと結びついたスケール
ダイアトニックスケールはダイアトニックコードと同じで、曲のキーの各音にそれぞれのスケールが結びついています。
メジャースケールを例に挙げると1番目のコードはメジャー7thで、スケールはアイオニアンスケール。
2番目のコードはマイナー7thで、スケールはドリアンスケール。
3番目のコードはマイナー7thで、スケールはフリジアンスケール。
4番目のコードはメジャー7thで、スケールはリディアンスケール。
5番目のコードはドミナント7thで、スケールはミクソリディアンアンスケール。
6番目のコードはマイナー7thで、スケールはエオリアンスケール。
7番目のコードはマイナー7thフラット5で、スケールはロクリアンスケール。
ダイアトニックコードに対応しているダイアトニックスケールが分かったら、それぞれのスケールの音を数字で確認してみましょう。
コードトーンを色分けしてみると、コードとスケールの関係性が分かりやすいです。
【アイオニアンスケール / メジャー7th】
1-2-3-4-5-6-7–1(8)
【ドリアンスケール / マイナー7th】
1-2-b3-4-5-6-b7–1(8)
【フリジアンスケール / マイナー7th】
1-b2-b3-4-5-b6-b7–1(8)
【リディアンスケール / メジャー7th】
1-2-3-#4-5-6-7–1(8)
【ミクソリディアンスケール / ドミナント7th】
1-2-3-4-5-6-b7–1(8)
【エオリアンスケール / マイナー7th】
1-2-b3-4-5-b6-b7–1(8)
【ロクリアンスケール / マイナー7thフラット5】
1-b2-b3-4-b5-b6-b7–1(8)
ダイアトニックコードだけだと1番目と4番目のメジャー7thコードが一緒、2番目3番目6番目のマイナー7thコードも同じコードで違いが分かりにくかったのが、ダイアトニックスケールを紐づけることでそれぞれの違いが見えてくるようになります。
【アイオニアンスケール / メジャー7th】
1-2-3-4-5-6-7-1(8)
【リディアンスケール / メジャー7th】
1-2-3-#4-5-6-7-1(8)
【ドリアンスケール / マイナー7th】
1-2-b3-4-5-6-b7-1(8)
【フリジアンスケール / マイナー7th】
1-b2-b3-4-5-b6-b7-1(8)
【エオリアンスケール / マイナー7th】
1-2-b3-4-5-b6-b7-1(8)
基本的にダイアトニックコードでできている曲やコード進行の場合は、その曲のキーとなるスケールで弾いていれば音を外すことはありませんから、コードごとにスケールを使い分けなくても大丈夫です。
しかし、転調している場合はそうはいきません。
メロディーがコードトーンをなぞっている時は音があっていても、コードトーン以外の音がキーから外れてしまうと調子はずれなメロディーになってしまうんですね。
これが、スケールの知識がないまま書いた曲のなんとなく違和感があるメロディーの大きな原因になっています。
メジャー7thのコードで使うスケールの4の音がナチュラルか、それともシャープしているのか。
マイナー7thのコードで使うスケールの2と6の音使いはどうなっているのか。
このコードトーン以外の音の選び方が意外な隠し味になっています。
転調後のコード進行では、新しいキーのダイアトニックコードを見極めて、コードにあったダイアトニックスケールを使うことで違和感はかなり解消されます。
キーを把握、ダイアトニックコードを把握、コードにあったスケールを使う。
この3ステップです。
このポイントを押さえておけば調子外れのメロディーはかなり防ぐことができます。
キーは楽譜があれば調合を見れば分かりますし、ドミナント終始を見つければ大体見当がつきます。
キーが分かればダイアトニックコードも分かります。
あとは、コードとスケールの関係さえ分かればバッチリです。
メロディーがしっくりこないと感じた時はそのコードがダイアトニックコードかどうか、転調していないかどうか、転調していたら転調後のキーは何かをそれぞれ把握する癖を身につけておくと良いですよ。
1音の違いで使い分けるスケール
「転調後のキーが分かったら、ダイアトニックスケールなんて考えずに新しいキーのスケール1発でいけるんじゃない?」
こんな疑問を持った方もいらっしゃるかもしれません。
はい、複雑なコード進行でなければ問題ないです。
でも、ここで思い出してもらいたいのが部分転調です。
ダイアトニックコード以外のコードがパッシングコードとして出てくることは多々あります。
例えばこんなコード進行があったとします。
AbMaj7 – G7 – CMaj7
G7からCへドミナント終始しているので、キーはCメジャーと考えていいでしょう。
となると、AbMaj7はbVIMaj7になりますね。
Iのコードはアイオニアンスケール、IVのコードはリディアンスケールが自然なことは分かりましたが、この場合のbVIMaj7はどっちのスケールを使ったら良いんでしょうね。
それでは分析をしてみましょう。
bVIMaj7はサブドミナントマイナーコードになりますので、同主調となるナチュラルマイナースケールの音を割り出してみます。
(同主調とはハ長調に対するハ短調のように、同じ音をルートとしたメジャースケールとマイナースケールの関係になります。)
Cメジャーのキーに対する同主調はCマイナーなので、Cナチュラルマイナースケールの音列を確認します。
C – D – Eb – F – G – Ab -Bb – C
次にAbMaj7の構成音を割り出します。
Ab – C – Eb – G
次に、コードのルートになるAbから数えて4番目の音がCナチュラルマイナースケールのどの音なのか確認します。
Ab -Bb – C – D – Eb – F – G –
Abから4番目の音はDなのが分かりました。
あとは、その音がAbMaj7というコードの中でナチュラル4なのかシャープ4なのか見極めるだけです。
メジャー7thの構成は1-3-5-7なので、3の半音上あるいは5の全音下がナチュラル4、3の全音上あるいは5の半音下がシャープ4になります。
DはCの全音上、Ebの半音下なので、AbMaj7のDはシャープ4なのが分かります。
ということで、この場合のAbMaj7はbAリディアンスケールが適しているのが分かります。
…ややこしいですね。 (^^;
それでは、もう少しシンプルなアプローチをしてみましょう。
AbMaj7のキーがCナチュラルマイナーだと分かったら、コードトーン以外の音はCナチュラルマイナースケールの音を割り当てます。
Ab – (Bb) – C – (D) – Eb – (F) – G – Ab
ダイアトニックコードの場合は前述の方法と同じことになりますが、この方法だとダイアトニックコードではないコードにも対応できるようになります。
例えば、部分転調のコードでキーやダイアトニックコードが分からない場合は、部分転調前のキーで考えてみます。
前述のコード進行で確かめてみましょう。
AbMaj7 – G7 – CMaj7
AbMaj7の4番目の音を、本来のキーのCメジャーから割り出してDとします。
Ab – (B) – (C) – D – (E) – (F) – (G) – Ab
するとAbから見てDはシャープ4になるので、AbMaj7はリディアンスケールとなります。
別の例でも検証してみましょう。
Dm7(IIm7) – DbMaj7(bIIMaj7) – CMaj7(IMaj7)
というコード進行があったとします。
Dm7がDドリアン、CMaj7はCアイオニアンだとすると、DbMaj7はどのスケールになるのでしょう?
この場合、キーがCメジャーなのでスケールの構成音はCDEFGAB(C)になります。
Dbから数えて4番目の音はGになります。
Db – (E) – (F) – G – (A) – (B) – (C) – Db
DbMaj7はメジャーのコードなので3度の音はメジャー、この場合はFが長3度になって、Gはその1音上になります。
長3度の半音上は完全4度でGb、Gはさらに半音上なので増4度、つまりシャープ4になるので、DbMaj7はDbリディアンスケールが良いということになります。
他の音との兼ね合いもありますので必ずしもそうなるとは言い切れませんが、転調部分の前後の曲想にあった音使いになりますので音が馴染みやすくなります。
また、もっと簡単に見分けられる方法として、これはテンションコードに限定されるのですが、#11thのテンションがついているメジャーコードはリディアンです。
テンションはオクターブ上のコードトーンとなり、2度は9th、4度は11th、6度は13thになります。
テンションについては後に取り上げる予定ですので、ここでは軽く触れるだけにしますが、ダイアトニックスケールが分かればテンションコードにも強くなります。
テンションコードが分かるとジャズ系のオシャレなコードも使えるようになるので、その辺りに興味のある方はダイアトニックスケールの知識がとても役に立ちます。
アイオニアンとリディアンの見分け方
それでは、今回のトピックのポイントをまとめてみましょう。
●アイオニアンは4度がナチュラル、リディアンは4度がシャープ
●メジャー(長調)のダイアトニックコードでIはアイオニアン、IVはリディアン
●マイナー(短調)のダイアトニックコードでbIIIはアイオニアン、bVIはリディアン
●部分転調の場合は、転調直前のキーの構成音から4度の音を割り出すと自然な感じにまとまりやすい
●#11thのテンションがついたメジャーコードはリディアン
メジャーコードでメロディーがしっくりこないと感じたら、このポイントをチェックしてみてください
●コードトーン以外の音はダイアトニックスケール、あるいは曲のキーのスケールの音を使っているか
●そのメジャーコードはダイアトニックコードか、それとも転調しているのか
●転調していたら、転調後のダイアトニックコードを確認
●転調後のキーがわからなかったら、コードトーン以外の音は転調前のスケールの音を使ってみる
メジャーのキーの中で出てくるメジャーコードはIとIV、サブドミナントマイナーコードでbIIとbIIIとbVI、部分転調も加えるともっと増えます。
同主調の関係でIとbIIIはアイオニアン、IVとbIIとbVIはリディアンになります。
こうやって分析してみると、意外とリディアンスケールの出番が多いことが見えてきませんか?
たった一つの半音違いのスケールなんですけど、この半音を意識できるかできないかでメロディーのしっくり感が違ってくるなんて奥が深いですね。
最初はとっつきにくい世界かもしれませんけど、一つ一つ慣れていくといつの間にか馴染んでいたという感じで身についていきますので、焦らずにコツコツと音と遊びながら慣れていってみてください。
それでは今回はこの辺りで。
次回はマイナーコードでのダイアトニックスケールの使い分けを取り上げたいと思います。
次回もお楽しみに♪
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